賃上げとNPO

2023年3月16日(木)

エネルギー価格や食料価格の高騰といった物価高に押される形で、今年の春闘は大企業を中心に異例の高水準での賃上げが実現しているようです。大企業がこれまで内部留保を溜めに溜めこんできた中では、実は数年(いや、十数年)遅きに失した感もありますが、まずは一つの動きが始まったことは良いことです。世間では今後これが中小企業にどこまで波及していくか、それを見守っている状況にあります。(全国の従業者の7割が中小企業勤務者ということですので、こちらの方が本丸です。)

翻ってNPO業界。ものを生産し、雇用を維持することで、消費につなげ経済を動かし社会を回していくのが企業であるとすると、そことは一線を画し、一味違った社会的なミッションを掲げ、社会貢献することを目指して活動しているのが多くのNPO法人です。しかしそれでも、そのNPOの活動を支え、動かしているNPO活動従事者たち(職員さんたち)は、やはり企業が回す生産と消費の経済の中で現実の生活を営んでいる一般の生活者です。社会の変化にも合わせながらNPO活動を長く存続させていくためにも、NPOで働く人たちの賃上げも考慮されていく世の中になれば良いと思います。

そもそもNPOはその活動の中で、経済活動(生産活動)の比重が低いため、どうしてもその活動の財源を寄付や助成金に頼らざるを得ない側面があります。賃上げに対応した助成金(NPO内での賃上げ額を対象として支援してくれる助成金)など、支援する助成財団の側にも新たな支援の方法を開発していただきたいと思うところでもあります。

NPO法(特定非営利活動促進法)が施行されたのが1998年。そこから日本のNPOの歴史が始まったと考えると、多くのNPOはデフレの時代しか経験しておりません。デフレ、つまりは「ものの値段が動かない時代」とは、振り返ると、金融の業界の意向でお金が配分され、片寄ったところにはお金が貯まるが逆サイドには何も回ってこないという、格差が助長されてきた世の中だったように思います。その中で、それではいけないと市民が立ち上がったのがNPOでした。デフレという時代環境の中でミッションを追求してきたのが日本のNPOだったのです。

そして今ようやく、極めて長期のデフレの異常さに世の中が気付き、コロナという予想もしなかった災害で世の中が揺さぶられ、ウクライナでの戦争も決して遠い異国の地の話しではなくなり、世の中が再び動き始めているのかもしれません。コロナの時の全国民への一律10万円の特別定額給付金の支給など、つい3年前までは冗談としか思われなかったような政策が、あっという間に実現した(やれば出来るのだということが分かった)、こうしたことが一つずつ何かに風穴を開け、デフレの世の中を変えようとしています。

デフレを抜け出すということは、状況によって程度の差はまちまちですが、ものの値上がりや賃金の上昇が起きるということです。それは時代環境の変化の中で起きるある種の副作用には違いありませんが、経済や貨幣の意味合いという視点で考えると、そちらの方が正常な社会に近いように思えます。そうした社会の中でNPOをどのように経営すれば存続させていくことができるのか、NPOは何を目指すべきなのか、新たな時代環境の中であらためて考える時が迫っているのかもしれません。

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