103万円の壁(NPOと政治)

2024年12月10日(火)
10月の衆議院議員総選挙以降、テレビニュースで「103万円の壁」の言葉を聞かない日はありません。総選挙で躍進した国民民主党が「国民の手取りを増やす」、「働く意欲に応じて働けるようにする」とのキャッチフレーズのもと提唱する政策で、選挙で負けた自民・公明もそれを受け入れる姿勢を見せているものです。

しかし我々は冷静に、これにどれ程の意味があるのかを見定めていく必要があります。
✓ 年収が103万円(103万円の壁)を超えても所得税が掛かるのはその超えた金額に対してだけ。従って、そもそも現行制度でも103万円を超えて働くと手取りが減るわけではありません。
✓ もちろんこの壁を103万円から引き上げて行くことでの減税効果はありますが、高所得者ほどその金額メリットが大きくなる(減税額が大きくなる)という逆進性をはらんでおります。
✓ むしろ年収が106万円(106万円の壁)を超える時点で、従業員51人以上の企業に勤めている方については、扶養から外れ自ら社会保険料を支払う義務が生じてまいります。この場合は社会保険料分だけ手取りが減ることになります。もっともこの場合は厚生年金に加入することになりますので、将来の年金受給額は増えることになり、個人にとってはメリットとデメリットが錯綜する話しとなります。
✓ さらに年収が130万円以上となると、従業員51人未満の企業に勤めている方や自営業者も含めて、扶養を外れ自ら社会保険料を支払う義務が生じてまいります。この時、自営業者などが国民健康保険・国民年金へ加入するとなると、企業勤めで健康保険・厚生年金に加入する場合とは異なり企業による社会保険料の半額負担もなく、また将来もらえる年金金額も国民年金だけの場合は厚生年金加入者よりも少なくなるので、個人にとってメリットは薄く、デメリットの方が大きいと感じる人も多く出てくるのではないでしょうか。
✓ しかしそもそもが、このように国民総動員のような形で、生活のためにみんなが「会社勤め」をしなければならない(生活のためにより長く働きたいと思わせる)方向に単純に社会の仕組みを向けて行くことの是非は如何に?

落ち着いて眺めて行くと、所得税の観点から103万円を議論するよりも、社会保険の観点から、特に年金制度のあり方を議論する方が本来は意味のあることです。ただ年金制度の場合は話しが複雑になりすぎて、なかなかまとまりません。従って政党が選挙公約に掲げるにはリスクの大きい(実現するのが難しい)テーマであると言えるのかもしれません。だから政治家はそれを後回しにするのでしょうか? さらには、「国民が全般的に生活を取り戻す」、「経済を活性化させる」という意味では、所得税に先んじてまずは消費税の減税や廃止などを議論する方が本来は理にかなったアプローチであるはずです。政治家はなぜ財務省と本気でそこを議論しようとしないのでしょうか?

結局、政治は、「国民生活のため」と言いながら、実は政党や政治家個人の立場から、単に国民受けするような語感だけが優しいキャッチフレーズや表面だけの浅い議論でマスコミを動かし自分に流れを引き寄せてこようとする動きであると思われることも多々あります。 まさかこの「103万円の壁」の議論が、「企業団体献金の廃止」の成立・不成立の議論とのバーターでの政治上の取引材料として使われているなどということは考えたくもありませんが、そのようにすら見えてきてしまいかねない動きもあるのではないでしょうか。

NPO法(特定非営利活動促進法)の中で、NPOは政治上の主義の推進や支持を「主たる」目的としてはならない旨が規定されております。特に認定NPOとなると、「主たる」の文言が外れ、活動全般に渡ってより厳格に政治上の中立性が求められます。一方で、NPOが行う(個別具体的な)政策提言活動や特定の法律案への反対活動などは、基本的、恒常的、一般的な原理原則を指すと解される「政治上の主義」の推進でも支持でもありませんので、法的にも認められるところです。

我々はNPOの活動を介して社会課題の解決を実現していくことを目指す者として、NPOとしての政策提言活動に限らず、個人として日々の政治の動きにより関心を持ち、その動きを見抜き、警鐘を鳴らしていく、そのような心持ちで当面、政治を見て行く必要があるのではないでしょうか。(そういう思いを強くさせる、国内外でのさまざまな動きが重なっている昨今です。)

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