社会の分断とNPO

2025年1月30日(木)
アメリカではトランプ第二次政権がスタートしました。スタートダッシュの勢いが話題となっておりますが、一方でそれはアメリカ社会の分断を象徴するような政権となっております。なぜこの社会の分断は生じてしまったのでしょうか。いろいろと複合的な理由の積み重ねだとは思いますが、その中の一つに以下のようなことも考えられると思います。

アメリカ産業の「生産性」が二分されてしまったからではないでしょうか。「生産性」とは、一労働時間当たりに獲得される利潤と考えればよいでしょう。「生産性」が大きく増進している産業で働く人たちと、「生産性」が停滞したままの産業で働く人たちとでは、その生活、生き方、社会に対する心情が大きく変わってきます。

現代は、人は自分で畑を耕したり、猟や漁を行ったりして生きているわけではありません。多くの人は、雇われて働き、給料を得て、そこからモノを買って生きております。このモノの売り買いは「流通」と呼ばれますが、「生産性」の二分された社会では人々の「流通」への関わり方も二分されます。一定のお金がなければ思うように「流通」に参加することはできません。現代において「流通」への参加は人が日々生きて行くための基礎の一つです。そして人は「流通」への関わりを介して、自分の思いを(夢や希望も含めて)実現したり、社会の中での自分の役割や存在感を確認したり、相手との互いの関係を確認し合ったりすることができます。

「流通」への関わり方が二分されると、人の社会に対する思い・考え方も二分されてくるのではないでしょうか。

なぜ「生産性」が二分されたか。理由はさまざまあるとは思いますが、大きな流れとして、資本主義社会の行き着いた先が「新自由主義」だったからかもしれません。「新自由主義」とは、小さな政府(自助・競争)、規制緩和、資本の移動の自由を意図するグローバリズム等を求める経済思想です。それは余りにも「市場」の仕組みに頼った社会体制を作ってしまいます。

「市場」とは利益を合理的に、公平に分配するには力を発揮しますが、「損失」を公正に分担するには無力です。ここで言う「損失」とは、経済的損失はもちろんのこと、「流通」への関わり方から派生して人々に降りかかってくる災難という言い方で理解できるのではないでしょうか。例えば、格差、貧困の連鎖、孤立、マイノリティの生きづらさ、偏見、ジェンダー差別、自然環境の破壊、暴力、戦争、などです。こうした災難を「市場」はみんなには振り分けません。むしろその時々の社会的弱者と呼ばれる人たちに押し付けます。

「新自由主義」が唱える自助と競争が、「市場」を介して、産業の「生産性」と同時に人々の生活の基礎となる「流通」への関わり方を二分することで、社会の分断が起きているのが今のアメリカではないでしょうか。

トランプ大統領は反エリートを唱え、社会的弱者(生産性の停滞した産業に携わっている人々)の心情をストレートに公に口に出すことで、熱狂的な支持者を増やしつつありますが、むしろそれは「自分ファースト」の一時的な、その時々のポピュリズムに見えてきます。やっていることは単純で、全てをdeal(取引)の目線で考え、自助と競争を世界へ広めようとしているだけのように思えます。

日本は今、格差の拡がりは目にしますが、幸いにもまだ社会の分断が起きているとまでは言われておりません。しかし現代は、他国で起きたことがすぐに各国へ伝播していく時代です。日本にもいつ分断の波が押し寄せて来るかも分かりません。一度社会が分断されてしまうと、その原因が、経済にあろうが、政治にあろうが、ましてや戦争などという直接的な暴力にあろうが、それを修復して社会をまとめ直すには相当な時間が掛かるものです。だから社会を分断させてはなりません。

日本の社会に分断の影を忍び込ませないようにするために、一様に全ての産業の「生産性」を高めていかなければならないという話しはテレビでもよく耳にします。あるいは「生産性」の高まる産業へ人々を移動させるなどという話しは政治家が唱えがちなことです。しかしどちらも難しいのではないでしょうか。今は、人々が、日本の経済成長ばかりに気を取られているような、そんな戦後の昭和の時代ではありません。

むしろ、自助と競争に根差した「生産性」ばかりを重視せずとも、人々がさまざまな方法で普通に「流通」に参加できる、今後も参加していくことができるという安心感を社会にもたらす仕組みから考えて行くことが、分断とは縁遠い社会につながっていくのではないでしょうか。そしてこの、「誰でも普通に流通に参加していけるための方策」、そのための知恵と経験はNPOセクターにこそ詰まっているのではないでしょうか。個別のNPOの日々の活動や考え方の延長上にこそ、分断とは縁遠い社会が開けてくるものと思います。

今に、個別のNPOの活動、考え方、そしてその精神が社会からもっともっと求められる、そうした日が来るものと思います。その日に備えて考えを鍛えておかなければならないと、最近のニュースは伝えてくれているのかもしれません。

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