デフレ

2025年9月22日(月)
デフレとは、物の値段が下がり続ける状態のことを言います(この場合、反対にお金の価値は上がります)。 日本も最近でこそようやく「デフレから抜け出したのではないか」と言われるようになり、逆に物価の上昇が問題視されておりますが、1990年代以降の30年間は「失われた30年」と呼ばれ、デフレによる経済の停滞が唱えられておりました。

これは一般に、アジア諸国などが次々と工業化され、安い労働力を背景にした安い工業製品が日本にも輸入されたことで日本国内の製造業が伸び悩んだことが背景にあると言われております。もっとも同じ状況でもアメリカではサービス業が新たに成長することで製造業の落ち込みを吸収する以上に経済が伸び、ドイツではユーロという欧州で統合された通貨圏の中の経済的に弱い国(ギリシャなど)への輸出が経済を成長させた、などで長期のデフレには陥らなかったものの、日本にはそうした受け皿がなく、しかも政府は緊縮財政を敷きアベノミクスと言いながら消費税を10%にまで引き上げた等々、そうした要因が重なった影響かと思われます。

そうした中で結論として言えることは、デフレとは、企業(資本)が経済を拡大させるマインドを失い (新規の経済分野に投資していく意欲を失い)、逆に自己防衛のために生産過程の「効率化」に重きを置いた経営に走るという社会現象であったのではないかということです。生産過程の「効率化」とは、要は、いかに人件費を抑えるかということに集約されます。つまりは給与が上がらない、賞与は下がる、人を減らす、あるいは人手を維持するために正規雇用から非正規雇用(派遣労働者を含みます)へ転換し賃金を押し下げる、こうしたことです。賃金としてお金が回らないから、お金がなくて人々の購買力は下がり、自ずと物の値段は下がります。だからデフレが続きます。

一方、企業(資本)には「効率化」で溜めたお金が内部留保として積み上がります。2023年末には日本全体で企業(資本)の内部留保はストックベースで600兆円を超え、GDPの金額に追い付きました。ちなみに2000年ごろの企業全体の内部留保金額は200兆円程でした。また「効率化」の過程で企業は製造拠点を海外に移すなどしたため、2024年末の日本の対外資産は1,600兆円を超え、そこから対外負債を引いた対外純資産は530兆円もあり、ドイツ(570兆円)に次ぐ世界2位です。さらにデフレ下で展開されたアベノミクスは株価を押し上げ、資本(企業や機関投資家や一部の高所得者)を潤しました。

以上がデフレの30年間で起きたことではないでしょうか。資本の都合が政治・経済を動かし、しわ寄せは全て人々の賃金に閉じ込められました。低金利が続いたためにいつの間にか円安になり、インバウンドがもてはやされるだけの社会となりました。株や社会的権益を持つものと持たないものの間で格差も広がりました。そして、コロナやウクライナ戦争などの要因で経済の潮目が一気に変わり物価高へと転調すると、そこに余計な尾ひれがつき (アメリカの真似をして)日本までもが右傾化していくという・・・、(すみません話しがそれました。)

紙面の関係で非常に粗い話しとなってしまいましたが、デフレとは結局、資本(企業)が本来の自分の社会的役割を見失い、「効率化」へ逃げ込み、その結果として格差の広がる社会を生み出すということだと思います。ただ一方で、インフレの世の中が良いのかというと、それはそれでどうなんでしょう。そのあたりはまた追々、書かせてもらえればと思います。

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