存立危機事態
2025年12月1日(月)
存立危機事態、この言葉は既に皆さんにもお馴染みの言葉だと思います。今回の高市総理の発言に功績があるとすれば、存立危機事態という言葉を日本全国に広く知らしめた、そのことに尽きるような気がします。
ちなみに台湾有事をめぐる日本の存立危機事態とはどういうことかというと、 (1) 例えば、中国から台湾への武力統一が始まり、 (2) 来援したアメリカ軍に対し中国軍から武力攻撃が発生した際に、 (3) 個別具体総合的にみてそれが日本の存立危機事態にあたり、 (4) 他に手立てがない場合に限っては、 (5) 日本の自衛隊は必要最小限の武力を用いる可能性がありうる、 と整理されるようで、日本にとって同盟国であるアメリカとの間での集団的自衛権を行使するための条件として存立危機事態の、内閣による認定と、国会による承認が必要であると定められております。
一方でこの台湾有事に関しては、次のようなことにも日頃から注意しておく必要があるものと思います。
・ 上記(2)のアメリカ軍への武力攻撃を受けて(3)の日本の存立危機事態を判断するにあたって、アメリカからの要請があれば今の日本の内閣は何があっても上記の(3)、(4)、(5)とプロセスを進展させることを断らない(断れない)ように思えます。今の日本の政治(政権)というものは、究極の自主的な判断力は有していないのではないでしょうか。全てがアメリカ頼みで国民もそれに慣れてしまっています。
・ もっともアメリカは、上記(1)の中国軍の武力侵攻が生じても(2)へは踏み込まない、つまりアメリカが台湾海域に軍隊を派遣して武力で中国に対抗し台湾を守ることはしないのではないかという気がします。アメリカが台湾に期待するものは例えば最先端半導体の生産能力などではないでしょうか。アメリカは、そうしたアメリカにとって役に立つものだけは手放さないということが担保されれば、中国との戦争ではなく、台湾に中国の影響力が浸透していっても構わないとする中国とのディールを優先させるように思います。
・ さらに言うとそもそも中国は、上記(1)にある台湾への武力侵攻は起こさないように思います。つまりは台湾を施政下に収めて行くにあたって中国は武力をもって台湾を物理的に破壊するのではなく、それは中国にとっても望ましい選択肢ではありませんので、むしろ、情報戦を駆使して台湾社会を分断したり、台湾政権を傀儡化したりすることを優先させるのではないでしょうか。そのために中国にとってもアメリカとのディールが生きてきます。
こうしたことを考えて行くと今回なぜ高市総理がああいう国会答弁を行ったのか、これは立憲の岡田さんに聞かれたからつい踏み込んで答えてしまったというお人好しな話しではなく(総理がそれであっては困ります)、全てを考え尽くした総理大臣が自らの支持率の高いうちに戦争の危機感を煽り、富国強兵を良しとする雰囲気を世間に醸し出すということを狙っているからではないかと疑いたくなります。なぜそうしたことを狙うのか、おそらく今後日本で始まる軍拡(アメリカ軍事産業からの物買い)をスムーズに進めるため、そのうえでアメリカ政権とアメリカ資本のご機嫌を取ることで日米の親密さと自らの強い政権のイメージを演出し、自らの支持率を上げて行くためとも考えられます。もし本当にそれが政権としての練った戦略だとすると、そのようなことに引っ掛かりたくはありません。あるいは仮に高市総理にそこまでの意図は無かったとしても、結果として日本の世の中がそのように流れて行ってしまうとなると、それは不幸なことでしかありません。
決して陰謀論を述べたいわけではありませんが、こうした大事な局面では一人一人がしっかり考えなければ将来へ向けて大きな禍根を残すことにもなりかねないと思います。
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