リベラルは偽善か?

2025年12月22日(月)
今放送されているNHKの朝ドラ「ばけばけ」。その主題歌の2番は、「日に日に世界が悪くなる。気のせいか。そうじゃない。」で始まります。こんな重たい歌詞を優しく、切なく、そしてなぜか思わず笑みがこぼれるように歌っています。

最近は政治的なリベラルのことを「偽善」と呼び、半ば馬鹿にする論調が世の中で急に増えてまいりました。リベラルとはもともと、自由を重んじ伝統や習慣には固執せず、政治的には穏健な革新を目指す立場を指すそうです。アメリカでは民主党、イギリスではちょっと前のトニー・ブレア政権に代表される労働党、そして西欧各国の社会民主政党、日本では自民党の中道勢力や公明党から立憲民主党あたりまでといったイメージではないでしょうか。

第二次世界大戦後の特に西側社会は市場経済の利益が地域や家庭に還元されるということで発展してきました。ただ市場経済が力を増して行く中で東西冷戦の終結も相まって、資本はグローバル市場経済を目指し、新自由主義と呼ばれる振る舞いをするようになってきました。つまり資本は、自らにとって都合の良い効率化を追求しながら地域や国家を飛び越えて世界中を駆け巡ることで飛躍的に成長し、各地で国家というものに圧力を掛けながら(例えば特定国に狙いを定めて通貨安に追い込む等)、自らの自由を謳歌できる世の中(例えば他国に巨額の投資をしたり、投資を引き上げたり、国境を超えて労働者を移動させたりできる世の中)を築き始めたのです。それは同時に、それぞれの国を構成していた地域や家庭や労働者を置き去りにして資本だけが繁栄するという事態につながりました。その時あろうことかリベラルは資本の側に付き規制緩和や緊縮財政に走ったため、一方でいくら社会保障やジェンダー平等、マイノリティとの共生社会を唱えたところで、地域や家庭を置き去りにされた多くの労働者から見たら、その姿はエリートの唱える「偽善」に映ったということではないでしょうか。

そして今や、その「偽善」のリベラルの揚げ足を取るように、保守派、あるいは右派を中心とした側から、安易なポピュリズムが台頭してまいりました。それは、置き去りにされた地域や家庭を取り込むことで政治的に優位な立場に立とうとする動きで、難しい話しや、論理、理念は抜きにして、イメージだけを操りながら「強さ」を押し出し、パワーゲームを制していこうとするものです。そのためには、歴史、文化、国家といったイメージも人々に押し付けます。歴史、文化、国家を押し付ける方が社会も統制しやすいのでしょう。歴史も文化も国家も本来は権力者が押し付けるものではなく、人々の心の問題として一人一人が自由に描き、獲得、保持していくものだと思うのですが。例えば歴史といっても徳川幕府が書き残した江戸時代と、大半の庶民・百姓が生きて感じてきた江戸時代とでは異なるはずです。つまり立場によって語られる真実も変わってくるということです。明治の世も、天皇制も、家父長制も、万人がそれぞれに自由に解釈すれば良いものです。しかし権力者によるパワーゲームはしたたかで、異なるナラティブ(物語、その解釈)を許しません。

いつの間にか、権力者が興じるパワーゲームやパワーバランスが臆面もなく平然と語られる世相になってきました。それは例えばトランプ政権であり、西欧での極右勢力の台頭であり、ロシアにもイスラエルにも中国にもそうした体質があります。日本にも保守化、右傾化のうねりがあり、日本国内での究極のパワーバランス思考の一端として、核兵器保有の話しが官邸内部でもささやかれ始めました。

しかしこうした保守派、右派によるパワーゲーム、パワーバランスは戦う相手を間違えているのではないでしょうか。それはパワーである以上、どうしても勝てる相手、弱い相手を攻めがちです。経済的、軍事的に弱い国や、自国内でも社会的なマイノリティ、例えば自国内にいる外国人、異民族、異教徒、女性、LGBTQ、生活困窮者(社会的な支援を要する人)などが攻撃の対象となってしまいます。本当は、戦うべき相手は、地域や家庭を置き去りにした資本(グローバル資本)であるはずなのですが、パワーゲームの世界では強い相手とは戦わないというのが賢い選択なのでしょう。

2025年 = 「日に日に世界が悪くなる。気のせいか。そうじゃない。」 → この歌は、「今夜も散歩しましょうか。」で終わります。
2026年は午年です。リベラルの「偽善」や、保守派・右派の「歴史、文化、国家の押し付けと、それこそ『偽善』的なパワーゲーム」を乗り越えた先にある未来を、一つ一つ思い描きながら現実をそこに近づけていく、そのような回り道をしながらも楽しんで散歩を続けていく、そんな自由で愉快でエネルギッシュな年にしたいものです。

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