ベネズエラ
2026年1月5日(月)
1月3日、トランプ政権がベネズエラで軍事作戦を展開しマドゥロ大統領夫妻(妻はベネズエラの元国会議長)を拘束するという、とんでもないニュースが飛び込んでまいりました。日本のテレビはのどかな話しですが、お正月番組に追われ4日まではまだ本件に関わるまともな報道も解説も余りなされておりません。
一方SNSでは早速、「トランプよくやった。独裁者(共産主義者)からの解放。ベネズエラ国民が歓喜。」という論調の書き込みが、ベネズエラ国民が喜ぶ動画と共に飛び交っております。もともとベネズエラでは、豊富な石油資源からの収入のみに頼った経済構造のため貧富の差が拡大しておりましたが、その後はそれを覆そうと反米的で極めて強権的な左翼政権が生まれたという経緯がありました。そうした何十年にも渡る歴史的経緯を踏まえ国内が分断された状態にあったと思われることから、今回の事態を歓迎する国民もいれば、落胆・脅威に感じる国民もいることでしょう。それに対する日本のSNSの反応を見ていると、いつものことですが、まずはこのトランプ礼賛者(一般に右寄りの保守派)のSNSでのフットワークの軽さと押しの強さには感心します。ただこの論調には大事な視点が抜け落ちております。つまり、今回のトランプ判断は決してベネズエラ国民の幸福を目的としてなされたのではなく、あくまでもアメリカの利益(例えば石油利権の回復)のための判断であるということです。そういう意味では「ベネズエラ国民が歓喜。だから良かった。」といった話しは、よく考えられていないピント外れの理解に基づいた主張であると言えるのではないでしょうか。
それにしてもトランプ政権は自分の利益のためには他国への突然の軍事作戦までをも平気で行うという、なぜそこまで増長してしまったのでしょうか。この1年間、どこの国の指導者(と呼ばれる人たち)も誰一人として面と向かってトランプ政権を批判することもなく、ご機嫌を取り、むしろノーベル平和賞へ向けたお膳立てまでしてきました。そうした皆の姿を見て、トランプ大統領自身が大きな勘違いの無限ループに陥ってしまったのではないかと思われます。「強いもの」は人から崇められ、人から崇められることで「強さ」を維持できる。だから「強さ」こそ自分にとっての、そしてアメリカにとっての永遠の命だと。 (「強いもの」と「強さ」を「神の栄光」という言葉に置き換えると、トランプ支持基盤の一つであるアメリカキリスト教福音派、そしてアメリカ資本主義を読み解く糸口になるような気がします。「神の栄光」とは、二元論的で絶対的な「強さ」を連想させます。)
今回のベネズエラ軍事作成を今後日本はどのように評価していくのでしょうか。1月4日に日本の外務省が「邦人の安全確保の最優先と、わが国は国際法の原則の尊重を重視してきた」とする談話を発表しましたが、何か言っているようで何も言っていない、遠くでの知らんふりのようです。今回の事態は、日ごろ、表面的な数字上の損得でしか世の中を見通せない(という気がしてならないのですが)高市政権や日本維新の会には、かなり荷が重い話しかもしれません。世界の将来を間違えない方向に導く一助となる動きが日本もできるのかどうか? (ちなみに最近「ゆ党」路線を自認している国民民主党が加わっても役に立つ話しではありません。あと、思うのですが、昨年7月の参院選前からトランプ政権の政策に呼応した政策を打つことが日本の安定と繁栄につながると、まるでトランプ政権の日本支店のような主旨の発言を繰り返してきた参政党(神谷代表)は今後もそうした主張を繰り返すつもりでしょうか。)
なお、今回の軍事作戦が1月2日に中国が派遣した特使がベネズエラのマドゥロ大統領と会談した直後だったことから、アメリカしてやったり/これは中国の失態であると揶揄するSNS上での書き込みも見られましたが、今回の件を一番ほくそ笑んで見ているのは実は中国ではないでしょうか。アメリカが何の常識的な脈絡もなく突然他国へ向けて軍事作戦を展開しその大統領を拘束する姿を見て、自らも真似をするのか、あるいはこの機にアメリカを非難して世界の中での自分の立場を強化するのか、中国にとっては戦術の手札が増えます。中国からベネズエラへの融資額620億ドル(10兆円弱)が消えても割に合うのではないでしょうか。
私は、トランプ政権は2期目発足の当初からアメリカと中国で世界を二分する(すみ分けする)ことを目指していたのではないかと想像しております。それがアメリカにとって最も痛むことなく世界に対する覇権を維持できる方法だからです。2026年はトランプ-習近平会談が4回も開かれる可能性があるようです。普通ではありません。これから本格化していく各分野、各場面でのアメリカと中国との間のディール。その序幕としてまずはアメリカがベネズエラに一つ駒を進めた、そんなところではないでしょうか。中国にとっても二大国での「すみ分け」は悪くない話しだと思います。今回の件はベネズエラが、アメリカと中国という二つの大国の阿吽の呼吸の最初の餌食にされたということかもしれません。 (ちなみに2025年のベネズエラ野党指導者マチャドさんへのノーベル平和賞も、今回のベネズエラでの軍事作戦、さらには2026年トランプ・ノーベル平和賞受賞へ向けた布石の一つだったのではないかと疑いたくもなります。トランプさんとマチャドさんは互いに気が合う資質を持ち合わせているようですので。)
本日は年の初めということでご容赦いただき、唐突に飛び込んできたとんでもないニュースから連想される大きな「妄想」を書いてみました。 (本当は、もっと米中以外の視点で、平和・経済・社会に関する「妄想」が描かれ、語られる世の中になると良いのですが。。。)
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