インフレ
2025年10月3日(金)
インフレとは、物の値段が上がり続ける状態のことを言います。先日お送りしたデフレとは逆の現象です。 (デフレ: NPO応援隊|2025年9月22日(月) )
インフレが起きる原因の一つは「資本」が持つ本来の性質にあると思います。「資本」とは、その生産を拡大していくことを自らの唯一の存在理由とするものです。つまり、「資本」は常に利益を追求し、得た利益を拡大再生産へ投資し続けます。ここで言う「生産を拡大する」とは、(1)生産規模を大きくする、(2)新しい生産方法を開発する、(3)新商品を開発する、(4)新規分野へ乗り出す、(5)輸出も含めて新規市場へ進出する、などを意味します。資本(企業)がこうした生産の拡大を続けていく限り、その動きに伴って社会に出回るお金の量は増えていきます。お金の量が増えることで、物の値段は上がります。つまりインフレとなります。
従って資本主義とは、資本が本来の姿で活動している限り、基調としてはインフレになります。日銀も含め各国の中央銀行が例えば2%程度のインフレを正常な目標値として掲げながら金融政策を打っていくのも、資本主義の立場からするとうなずけるものがあります。それは拡大再生産がなされているということを意味し、経済成長と呼ばれる状態が生まれます。
一方インフレには拡大再生産とは関係のないところで起きるインフレもあります。例えば企業にとって、ものの仕入価格や生産コストが上がる (特に石油、その他の海外からの輸入価格が上がる) ことに起因するインフレ、これをコスト・プッシュ・インフレと呼びます。あるいは戦争やその他の理由で国内の供給設備(工場)やインフラ(港、橋、道路)などが破壊され生活必需品などの供給(生産)が極端に落ち込むことで起きる極端なインフレ、これをハイパーインフレと呼びます。こうした類いのインフレは「悪いインフレ」として人々の生活を苦しめます。
さて問題は、拡大再生産=経済成長=インフレ、これをどう考えるかです。冒頭に記載した(1)~(5)のような状況は、一見、喜ばしいことのように見えますが、果たしてそうなのでしょうか。それを裏返すと、自然破壊、地球温暖化問題、売れさえすれば良いという無駄なものの大量生産(不必要な頻繁なモデルチェンジなど)、過剰な機能と見栄えをそろえた高級品志向(安いものを売るより高いものを作って売った方が企業は儲かります)、煽り立てる広告(SNS、テレビ)、「便利」を至上とする価値観の押し付け、今まで市場(資本)に頼らずに地域や家庭で事を済ますことができていた分野についての市場への取込み(教育、保育、介護、余暇、趣味、一家の団欒などなど、今ではお金を払って企業からのサービスを受けないと成り立たないものがどんどん増えております)、その市場へ付いていくためにはお金を得なければ生活できないので国民全員働け働け(国民が一人でも多く働くことで儲かるのは資本です)、さらにはそうした社会の海外への拡大(特に途上国などを次々とお金がなければ生きていけないような社会に作りかえた)とその海外からの搾取などなど、いろんなことがつながって出てくるものです。
秋の夜長です。たまにはゆっくりと、このような観点から経済を眺め直してみるのも面白いのではないでしょうか。
よく政治家が大声で連呼する、「手取りを増やす」とか、「103万円の壁」とか、「強い日本」、「豊かな日本」、あげくの果てには単に「America first」を模倣しただけの「日本人ファースト」などといったスローガンには、本当に大事で身近な経済のことも、我々が目を向けるべき本当の社会正義のことも、何も表現されていないように思えてきます。
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